教皇フランシスコ、複合危機に対する多国間の取り組みに励まし 教皇フランシスコ、複合危機に対する多国間の取り組みに励まし  (Copyright 2011 Brett Jorgensen Photography)

教皇「複合危機に、多国間での取り組みを」

教皇フランシスコは、教皇庁立生命アカデミーの総会参加者にメッセージをおくられた。

 教皇フランシスコは、教皇庁立生命アカデミーの総会参加者にメッセージをおくられた。

 同アカデミーは、3月3日と4日の両日、バチカンに近接したアウグスティニアヌム教父研究所ホールで、「世界の終末? 危機、責任、希望」をテーマに総会を開催した。

 教皇はこのメッセージで、同アカデミーの今総会が、いわゆる「複合危機」への対応を考察するものであることに触れながら、今日の「複合危機」の背景で絡み合う、戦争、気候変動、エネルギー、感染症、移民現象、技術革新などの多様な問題を列挙。

 わたしたちの生活に様々に関与してくるこれらの複合的な危機を前に、世界の未来をどう解釈すべきかを問わざるを得ない、と述べている。

 教皇は、この問題に取り組むための第一歩は、世界と宇宙におけるわたしたちの在り方を注意深く考えることから始まる、と助言。

 もし、変化に対する、個人、社会の根深い抵抗を真剣に分析しなければ、われわれは他の危機と同じことを続けるだけだろうと述べ、その一例として、最近のパンデミック危機を「社会的な意識と実践を深く変革するための一層の努力を『無駄にしてしまった』機会」として思い起こされている。

 次に、教皇は、もう一つの重要な一歩は、いつもの安心や習慣や恐れにしばられて不動でいないこと、そして、科学の知識の貢献に注意深く耳を傾けることであると言う。

 教皇は先のシノドスでの体験を回想しつつ、傾聴という姿勢の重要さを改めて提示。

 様々な人々とそのストーリーとの出会い、科学的知識への傾聴を通して、わたしたちは、人類学と文化をめぐるわたしたちのパラメーターが、いかに大きな見直しを必要としているかがわかるだろう、と述べている。

 教皇は、希望は、わたしたちの歩みを支える本質的な姿勢であり、それはあきらめと共に待つことではなく、狭い個人の囲いをはるかに超えた、真の人生に向かって手を前に差し出すこと、と指摘。

 希望は、「『民』との一致と結ばれ、そして、一人ひとりの人は、この『わたしたち』の中で初めてこの真のいのちに到達することができる」(ベネディクト16世、回勅「希望による救い」14)と述べながら、複雑で地球規模の危機に直面しているわたしたちは、希望が持つこのような共同体的側面のためにも、グローバルな広がりを持つ手段を重要視する必要がある、と強調された。

 こうした中、教皇は、国際機関が重要性を失いつつあること、一方で、国際機関もまた特定の国の利益を守ろうとする近視眼的な態度によって損なわれていることに言及。

 それでも、わたしたちは「世界規模の共通善、飢餓と貧困の根絶、基本的人権の確実な擁護、これらを保障するための権限を付与された実行力のある世界機構」(教皇フランシスコ、回勅「兄弟の皆さん」172)のために、断固として努力し続ける必要があり、そうすることで、政治情勢の変化や一部の利害に影響されることのない、安定した実効性を持つ多国間主義を推進できるだろうと、複合危機への多国間での取り組みを励ましている。

 

 

 

04 3月 2025, 16:31