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世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)会場ホール前 2025年1月23日  世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)会場ホール前 2025年1月23日   (REUTERS)

教皇「効率優先のため人間の尊厳を侵害してはならない」

教皇フランシスコは、世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)にメッセージをおくられた。

 世界経済フォーラム(WEF)の2025年の年次総会(通称:ダボス会議)が、スイス東部ダボスを会場に、1月20日より25日まで開かれている。

 教皇は、今年の総会のテーマ「インテリジェント時代における連携」を受け、同フォーラムにメッセージを寄せられた。

 この中で教皇は、人工知能(AI)がそれを設計した人間の知性を模倣するように構想されているがゆえに、そこから生じてくる一連の問題や課題を注視。

 AIの人間の能力に似た、あるいはそれを凌駕する高度な技術とスピードを伴う創造性が人類の役割に与える影響、AIが作り出すものの成果が人間のそれとほとんど区別がつかないために、公共の場における真実・正真性の危機が高まる懸念、自律的に学習し特定の選択をするように設計されたこのテクノロジーが、新しい状況の中でプログラマーが予期しない反応をし、倫理責任、安全保障などに関わる重要な問題引き起こす疑念などを問題として挙げられた。

 教皇は、AIの技術はいくつかの可能性の中から技術的に選択し、その選択は明確に定義された基準あるいは統計的推論に基づいているのに対し、人間は単に選択するだけではない、「心」を通して「決断」する能力を持っている、と強調。

 他のあらゆる人間活動や技術開発と同様に、AIも人間に適応して規律づけられ、より大きな正義、より広がる兄弟愛、より人間的な社会秩序を実現するための努力の一部とされなければならない、と述べられた。

 また、教皇は、世の中の問題はすべてテクノロジー的手段をもって解決可能と考える「技術支配的な思考体系」の増長にAIが利用される危険を指摘。

 こうした考え方の中では、人間の尊厳や兄弟愛は効率追求の二の次にされ、現実や善や真理はあたかも技術的・経済的権力から生まれるかのようである、と教皇は記している。

 効率を優先するあまり人間の尊厳が侵害されることはあってはならない、すべての人の生活を向上させるのではなく、不平等や対立を生み、それを増大させるような技術の開発は、真の進歩とは呼べない、と教皇は注意を喚起。AIがより健全な人道的・社会的・統合的な発展に役立てられることを希望された。

 そして、AIの複雑さを管理するために政府と企業は十分な注意を払うと共に、AIの適用をめぐる状況と社会に与える影響が次第に明らかになるのに従い、社会のあらゆるレベルで適切な対応をとる必要を示唆された。

        

23 1月 2025, 17:39