教皇、人類に奉仕するための諸宗教間の対話・協力説く
教皇レオ14世は、10月29日(水)、バチカンの聖ペトロ広場で一般謁見を行われた。
カトリック教会は、前日28日、第二バチカン公会議の公文書『キリスト教以外の諸宗教に対する教会の態度についての宣言』(原題:NOSTRA AETATE)の公布から60周年を迎えた。
同文書は、『キリスト教的教育に関する宣言』や、他の3つの公会議・公文書と共に、1965年10月28日に公布された。
教皇は、謁見中のカテケーシスで、諸宗教間の対話と、同文書公布60周年をテーマに講話を行われた。
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「神は霊である。だから、神を礼拝する者は、霊と真理をもって礼拝しなければならない」(ヨハネ4,24)。
教皇は講話の冒頭に、イエスがサマリアの女に向けた言葉を引用。イエスとサマリアの女の出会いを、真の宗教対話の本質を表すエピソードとして提示された。
これは、「互いが誠実に心を開き、注意深く耳を傾け、豊かさを分かち合う時に生まれる交流」であり、「神を渇望する人間の心と、人間に対する神の渇望という、渇きから生まれた対話」であると教皇は話しながら、「シカルの井戸で、イエスは文化、性別、宗教の障壁を乗り越えられた」と観想された。
今から60年前、1965年10月28日、第二バチカン公会議は、公文書『キリスト教以外の諸宗教に対する教会の態度についての宣言』の公布を通して、出会いと、尊重、受容の精神の新しい地平を開いた、と教皇は回想。
「この輝かしい文書は、他の宗教の信者たちを自分たちに属さない者としてではなく、真理への道を共に歩む旅人として迎え入れること、われわれの共通の人間性を確認しながら違いを尊重すること、そして、あらゆる真摯な宗教的探求の中に、全被造物を包容する唯一の神の神秘の反映を識別することを教えてくれる」と話された。
レオ14世は、特にこの公文書の最初の方向性は、ユダヤ教の世界に向けられ、聖ヨハネ23世はこれを通して本来の関係の再構築を望まれていた、と指摘。
これにより、教会史上初めて、キリスト教のユダヤ的なルーツをめぐる教義上の論文が具体化され、それは聖書的・神学的見地から決定的な転換をしるすものとなった、と語られた。
教皇は、この60年間にユダヤ教とカトリックの対話を通して実現されたすべてのことに感謝を表す一方で、今日においても、政治的な事情や一部の者による不正が、わたしたちの友情を損なうことを許してはならない、と述べられた。
公会議・公文書『キリスト教以外の諸宗教に対する教会の態度についての宣言』の精神は、教会の歩みを照らし続けている。それは、すべての宗教が「すべての人間を照らす真理の光線」(n.2)を反映しうることを認め、全カトリック信者に対し、他の諸宗教の信者たちとの対話と協力に誠実に関わり、彼らの伝統の中にある善きもの、真実なもの、聖なるものを認め、促進するよう招いている、と教皇は説明。
このような姿勢は、特に今日、人類のモビリティにより、様々な精神性・帰属性が出会い、兄弟的共存を求められる世界のあらゆる都市で必要とされるもの、と話された。
これまで以上に、今日の世界はわたしたちの団結、友情、そして協力を必要としている、と述べた教皇は、諸宗教が、人間の苦しみを和らげ、わたしたちが共に暮らす家である地球の保護に貢献し、真理・思いやり・和解・正義、そして平和を教え、様々な場所で、人類に奉仕する必要を強調された。
中でも、教皇は、人工知能の責任ある開発の問題に取り組む必要を課題として挙げ、人工知能が人間の代替として考えられる場合、人間の尊厳を著しく侵害し、人間の基本的な責任を無力化する可能性を懸念された。
諸宗教は、平和は人の心から始まることを教えており、その意味で宗教は重要な役割を果たすことができる、と教皇は述べつつ、わたしたちは、個人や、家庭、地域、社会、国、そして世界全体に希望を取り戻さなければならないと話された。
60年前、公会議・公文書『キリスト教以外の諸宗教に対する教会の態度についての宣言』が、第二次世界大戦後の世界に希望をもたらしたように、今日、わたしたちは戦争で破壊された世界と、荒廃が進んだ自然環境の中で、その希望を再構築するよう求められている、と述べた教皇は、諸宗教関係者にいっそうの協力と一致を呼びかけられた。
